2021.05.21

アクシス 2021年5月21日「種」

 二人の孫娘がベランダのプランターにまいたミニトマトの種が小さな芽を出しました。我が家を訪れるたびに芽の伸び具合を眺めながら成長を楽しみにしている孫たちを見ると、遠い昔のことが思い出されます。私も小学校2年生の夏休みに、祖母に手伝ってもらってアサガオの種をまきました。それを観察日誌にまとめて提出しました。日誌の表紙に先生が貼ってくれた銀賞のしるしである銀色の色紙。何と誇らしかったことでしょうか。

でも、もっと大きな感動は別のところにありました。土にまかれたちっぽけな黒い種が、水やりをしながら育てることによりやがて芽を出して成長し、色鮮やかな花を咲かせて私たちの目を楽しませてくれるのです。毎年律義に同じ時期に花を咲かせる植物を見て、祖母がよく「おまえと違って植物はちゃんと同じことを続けるよ」と皮肉交じりに言っていました。祖母の嫌味は別として、私は「植物ってなんて不思議な力を持っているのだろう」と感嘆したものです。

そんな経験があったものですから、スティーブン・R・コヴィー博士が『7つの習慣』で紹介している「農場の法則」に出逢った時はとても嬉しくなりました。人の成長は農場での穀物の成長と同じで、小さな種の中にある無限の可能性を開花させるためにはよく耕された土に種をまき、水や肥料を欠かさず、雑草を取りながら時間をかけて育てることが必要であること、決して一夜漬けで収穫はできないこと、でも手をかければ間違いなく実を着けてくれることを私に教えてくれました。その通りだと思いました。そして、この考え方がその後の私の生き方を支える一つの柱となっています。そうです。人の中には素晴らしい可能性の種が潜んでいるのです。

コンサルティングの仕事をしていた時は、毎日たくさんの異なった方々とお会いする機会がありました。心がけていたことは、コヴィー博士が言うように、その人の過去や現在の姿ではなく、将来の成長した姿を想像することです。「この方は将来どんな実をつけるのだろうか?」と考えたものです。すると不思議なことに、その方の持っている優れた点が輝いて見えてきます。

一つだけ、種を見つけて大切に育てるうえで気を付けたいことがあります。最近パートナーとして一緒に活動をさせていただいているジャック・キャンフィールドがこう警告しています。「多くの人は親や教師、コーチなど大人のロールモデルに応える過程で自分の中に先入観という脚本が形成され、大切な『自分という種』がそこに埋没してしまっている」。(The Success Principles『成功の法則』p. 31) まずは自分の種を見つけるところから始めましょう。「生きがい」の4つの分野のうち、特に「好きなこと」と「得意なこと」から種を見つけてください。見つけたらじっくりと時間をかけて育てましょう。それこそ一生かけて。一夜漬けはだめですよ。

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