アクシス 2021年4月30日「自分に正直であること」
私は子どもの頃、よく病気をしました。特に冬場は風邪をひくことが多く、小学生の頃は学校もよく休みました。卒業の時に担任の先生から記念に漢字一字の色紙をいただいたのですが、私の色紙には「健」と書いてありました。
込められた願いが通じたのでしょうか。中学進学後はまるで体質が変わったのではないかと思うぐらいにすこぶる健康で、ほとんど病気になったことがありません。
しかし一度だけ、胆石膵炎で3週間の入院を余儀なくされたことがありました。2013年のことです。ボクシングの試合の観戦に後楽園ホールに行ったのですが、突然腹痛に見舞われ、途中で帰宅せざるを得ませんでした。すぐに入院となり、それから3週間は痛みとの闘いでした。胆石によってふさがれた総胆管を消化液が逆流し、膵臓にかなりの炎症が起きていたのです。
会社では調整に追われました。講演や面談、トレーニングなど、1年先までスケジュールが決まっていたからです。しかも健康食品販売会社の社長が病気で入院したわけですからイメージが悪いですね。どう発表するかも懸念されました。その時、私は初めから「正直にそのまま伝えてください」とお願いしました。隠すことに意義を感じなかったからです。おかげさまで、多少の混乱はありましたが、皆さまにはご理解をいただくことができました。
もとはと言えば私の不摂生が招いたことです。それを謙虚に認め、その結果生じたご迷惑を素直にお詫びすることこそが私に課せられた責任だと思いました。いや、それしかできないのです。しかし、それを行うことで私の心には一転の曇りもなくなりました。いつ、どこでも何の躊躇もなく、起きたことをそのまま話すことができたからです。
これは個人的な経験に基づく小さな出来事かもしれませんが、私が前社での14年の間大切にしてきたことの一つでもあります。「自分の心に正直になる」ことです。敵対者渦巻く英国議会でもスピーチをする時に原稿を用意することのなかったインドの独立指導者マハトマ・ガンジーに倣いたいと思います。ガンジーが原稿を必要としなかったのは、真実しか語らなかったからです。自分に正直であれば、いつでも誰の前でも思ったことをそのまま正直に語ることができます。そして、正直な心から出た真実の言葉こそが人々の心の琴線に触れるのですから。